
黒猫のくろにゃんは、裏の家の軒の上にやってきていた。
小さくて、ノラ猫なので小汚くおまけに目つきも悪くて、お世辞にもかわいい子ではなかった。
くろにゃんが軒の上に来るようになっていろいろ、ご近所さんにリサーチしてみると、くろにゃんの性別と年齢が分かった。
その時、♂猫で歳は5歳とのこと。
聞くところによると、くろにゃんは五軒隣のワカバさんの家に飼われている、トミー君の親友。
トミー君とくろにゃんは同い年で、生まれたのも数日しか変わらないと、ワカバさんに教えてもらった。



もうずいぶん昔のことになるのですが、黒い猫を飼っていたお隣の家族が、猫を置き去りにして引っ越したことがありました。
置き去りにされた、黒猫は寒い中、目ヤニと鼻水を垂らしながら、うちの家の前で「にゃあ~にゃあ~」鳴いて、すり寄ってきた。
今だったら、助けて飼ってあげる選択肢もあるのだけど、当時は家を建て替えたばかりで、猫を家に入れると家がボロボロになると思い、飼うことはできなかった。
黒猫は、新しい隣人さんにも助けを求めたみたいだけど、新しい隣人さんも犬を飼っていたので、飼ってあげられなかったらしい。
そして黒猫は、いつの間にかどこかに行ってしまい、その後見かけることはなかった。



私は、あまり優しくないのでそんな話はすっかり忘れていたのだけれど、弟はその黒猫を見捨てたことに罪悪感を感じてしまい、そのままくろにゃんを見捨てたら、かわいそうだと、言い出した。
(続く)